事業主・労務担当者必見!「マタハラ防止措置」対策①


男女雇用機会均等法と育児介護休業法が改正されました。

その改正の中で、2017年1月から事業主がマタハラ防止措置を講ずることが義務付けられました。

 

では、「マタハラ防止措置」とは何を行えばよいのでしょう?

厚生労働省から、マタハラ防止措置に関する指針が出ています。

この指針をみながら、御社がこれから何を行っていくべきか考えていきます。

 

 

まず最初にお話しておきたいことがあります。

「マタハラ」とは、何か?

 

まずは、マタハラについて日本で最も有名で、マタハラ問題の先駆的団体として世界的に認知されている「マタハラnet」による定義をみてください。

 

マタハラnetによる定義

「マタハラ」とは、働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、妊娠・出産・育児などを理由とした解雇や雇い止め、自主退職の強要で不利益を被ったりするなどの不当な扱いをうけること。

 

1.「マタハラ」

2.「パタハラ(男性が育児参加する権利を上司・同僚に侵害される)」

3.「ケアハラ(介護と仕事の両立を侵害される)」

以上の3つのハラスメントを合わせて「ファミリーハラスメント」といいます。

 

マタハラは、「個人型」と「組織型」に分類できます。

「個人型」はさらに、「昭和の価値観押し付け型」と「いじめ型」に分類できます。

 

「昭和の価値観押し付け型」とは、

「女性は妊娠・出産を機に家庭に入るべき」

「家庭を優先すべき」

という間違った価値観から起こるケース。

 

「いじめ型」とは、フォローさせられる同僚の怒りの矛先が、妊娠や育休中の女性に向かってしまうケース。

(本当であれば、フォロー体制のできていない会社に問題があるのだが・・・)

 

「組織型」は、「パワハラ型」と「追い出し型」に分類できます。

「パワハラ型」とは、長時間働くことができない社員に対して、長時間労働を強制するケース。

産休・育休・時短勤務制度等の利用を認めない職場風土から起こります。

 

そして、「追い出し型」とは、長時間働けなくなった社員を労働環境から排除するケース。

要は、妊娠・出産したら会社を辞めるように仕向けるケースです。

この「追い出し型」のマタハラは、ほとんどの場合「違法行為」です。

法違反ですから、退職そのものが無効であり、損害賠償請求の対象にもなります。

 

 

「マタハラ」が起こる根本原因は、「性別役割分業の意識」と「長時間労働」、「法律に対する知識の欠如」といわれています。

 

女性は仕事に対する考え方が多様であることも、この問題を複雑にしています。

大きく3つにグループ分けできます。

1.結婚や妊娠を機に、専業主婦を選択する女性。

2.キャリアを最優先に働く女性。「バリキャリ(バリバリ働くキャリアウーマン)」

3.結婚や妊娠、子育てしながら働き続けたいと希望する女性「ワーママ(ワーキングママ)」

 

 

また、「マタハラ」を受けずに無事、妊娠・出産・育休を終え職場復帰できたとしても、そこには「マミートラック」が待ち構えていることもあります。

「マミートラック」とは、仕事と育児の両立をしている社員が、出世コースから外れた、昇進・昇格とは無縁のキャリアコースを選択せざるを得ない状況に追い込まれることです。

 

ここにも、「性別役割分業の意識」と「長時間労働」が根強くはびこっています。

 

 

以上が、「マタハラnet」によるマタハラの定義ですが、次に、厚生労働省が定めるマタハラの定義についてみてみましょう。

 厚生労働省がマタハラと定めるものには、大きく2つのものがあります。

 

①従業員が妊娠・出産・育休の申し出・取得等をしたことを理由として、事業主が解雇その他の不利益な取扱いをすること。

 

職場におけて行われる上司・同僚からの言動により、妊娠・出産した「女性労働者」や育休等を申し出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されること。

 

この②のマタハラには、2つのタイプがあります。

1.「制度利用への嫌がらせ型」

2.「状態への嫌がらせ型」

 

ですから、

「不利益な取扱い」

「制度利用への嫌がらせ」

「状態への嫌がらせ」

の3つのタイプに分類することができます。

 

「事業主が講ずべきマタハラ防止措置」は、②のマタハラを防止することを定めています。

 

 

1.「制度利用への嫌がらせ型」とは?

妊娠や出産をすると、様々な制度を利用できるようになります。

たとえば、「産前産後休業」や「軽易な業務への転換」、「育児休業」や「残業や深夜業の免除」等々。

女性だけでなく、男性も利用できる制度もたくさんあります。

 

これらは、法律で定められ、認められている制度です。

該当者が利用するのは、当たり前の権利です。

それを邪魔する権限など誰にもありません。

それなのに、制度を利用しようとしたり、実際に利用した時に、様々な嫌がらせ言動があれば、それは「マタハラ」となります。

 

上司が行う場合だけでなく、同僚が行う嫌がらせも「マタハラ」となります。

ただし、その内容によって、1回の嫌がらせ言動でoutの場合と、繰り返し行われた場合にoutとなる場合があります。

上司に当たる人間が行う嫌がらせ言動は、一発outになる場合が多いので、特に注意が必要です。

 

 

2.「状態への嫌がらせ型」

これは、妊娠・出産した女性労働者に対して行われるハラスメントです。

妊娠・出産すれば、だれでも労働能率が落ちます。

体調が悪く仕事ができない日もあります。

このような、妊娠・出産したということやそれによって仕事を十分にこなせなかったことに対して嫌がらせを行うのが、「状態への嫌がらせ型」マタハラです。

 

ここで注意していただきたいのが、「マタハラ」なる言葉が誕生したことで、その言葉に過剰に反応してしまう人が出てきます。

それは、上司の側にも、妊娠した女性労働者の側にも出てきます。

 

業務の調整の必要から、労働者の意向を確認することや、休業期間の変更を相談することは「マタハラ」には当たりません。

また、女性への配慮として、短時間勤務や配転を提案することも、「マタハラ」には当たりません。

 

何でもかんでも「マタハラ」になると恐るのではなく、当たり前のコミュニケーションをとりながら、部署の業務のスムーズな遂行と、妊娠・出産した女性労働者や育休等を申し出・取得した男女労働者への心遣いを両立させていきましょう。

 

 

 

現実は未だに、妊娠・出産・育児を行う女性を取り巻く環境が非常に厳しい。

法律によってマタハラ禁止が謳われても、現場には、まだまだマタハラが蔓延っています。

それが御社の貴重な人材の流出や、御社の成長・発展への足枷となっていることも考えられます。

 

だからこそ、もし御社が真摯にマタハラ防止に取り組んでいると評価されれば、優秀な人材の定着が望めます。

女性従業員だけでなく、男性従業員の定着にも効果が望めます。

御社で働くことを希望する人材が殺到することだって有り得ます。

人材が定着するということは、募集・採用・教育のコストを大きく削減できるメリットがあります。

当然、業務もスムーズに運ぶことが多くなりますし、従業員一人ひとりの能力UPやキャリアアップも期待できます。

 

優秀な人材の採用・定着には、ハラスメントの防止が必須です。

「絶対にマタハラを許さない!」という強い決意を持って、「マタハラ防止措置」に取り組んで下さい。

 

 

次回から、具体的な「マタハラ防止措置」についてお話していきます。